イランの宗教の特徴はイスラム教の”シーア派”という所にあります。
同じイスラム教の中でも、その中にはいくつもの宗派が存在しており、二大宗派と呼ばれているのがスンニ派とシーア派です。
大多数のイスラム教徒はスンニ派（全信徒の８−９割）でシーア派が少数派となっています。
その少数派であるシーア派の代表格がイランです。シーア派を国教としているイランでは、９割程度の国民がシーア派に属しています。
今回はそんなシーア派がスンニ派とどう違うかについて迫ってみたいと思います。
ーーーーー宗派の分裂ーーーーー
サウジアラビアのメッカの商人であったムハンマドは西暦６１０年、突然神からの言葉を聞き、その言葉を人々に伝え始めました。これがイスラム教の始まり。
ムハンマドが亡くなると、信者達は教えを守る為に、カリフと呼ばれる預言者の代理人を選び、自分達の指導者とします。
その４代目に、ムハンマドのいとこで娘婿のアリーがなったのですが、アリーは何者かに暗殺されてしまいます。
アリーが暗殺された後「アリーこそがムハンマドの血統をひく正当な後継者であり、他のカリフは認められない」という人々が出て来て、この人達がシーア派と呼ばれるようになりました。一方、アリーの血統だけを最高指導者にするのではなく、話し合いで決めていこうとしたのがスンニ派です。
ーーーーー十二イマーム派ーーーーー
シーア派のうち、イランでは十二イマーム派と呼ばれる宗派が主流となっています。
イマームとは、スンニ派においては、金曜日の集団礼拝の会衆の前方にたって礼拝の儀式を指導する人を指すのがふつうですが、シーア派においては絶対的な指導者となります。イランの「十二イマーム派」は人類の歴史にそのようなイマームが十二人だけ現れたと考えているのです。
アリーを初代として、親から子、子から孫へと、代々イマームが続きました。そして西暦８７４年第１１代イマームが亡くなったその日、第１２代イマームとなる息子が行方不明になってしまいます。
これを十二イマーム派の人々は、存在の目に見えぬ次元に身を隠したと考え、この状態をイマームの潜伏状態”お隠れ”と名付けます。それ以来現代までその状態が続いています。そしてこの隠れたイマームは、終末の日にメシア（救世主）として再びこの世に姿を現してくるものと信じられているのです。
ーーーーーシーア派の特徴ーーーーー
イスラム教では基本的に、日常生活のすべてが宗教に基づいています。理論上は何もかも「コーラン」とムハンマドの言行録である「ハディース」に帰着することになります。
しかし、実際上は「コーラン」と「ハディース」の限られたテクストだけでは、全く新しい状況で続々と起こって来るすべての問題をさばききれるものではありません。
そこで「コーラン」と「ハディース」をさらに深読みして（テキスト解釈）、そこから新しい法規を生み出さなければならないのですが、学者のとる見解が非常に異なります。その違いをめぐって多くの学派が歴史的に起こり、互いに激しく対立しているのです。
解釈の自由が認められる限り、どんな問題が起こっても、自分の都合の良いように解釈する事ができるのですが、西暦９世紀頃に、法律に関する限り聖典解釈は絶対にしてはいけないと、聖典解釈の自由が禁止されました。（イジュティハードの門の閉鎖）
しかし、シーア派はイジュティハードの門をはじめから全然閉じることしませんでした。シーア派は内面的解釈を追求していったのです。
どんなものにもふつうの人の目には見えない深みがある。すべて外的なものは内的なものの自己表現の場所である。そう考えたのです。
内面的なシーア派と外面的なスンニ派。この宗派の違いを巡って多くの国で対立が起きています。スンニ派にとって、シーア派は異端児のような存在なのです。たとえばスンニ派主体の国家は隣国にシーア派主体の国家ができる事を恐れ、仲間であるスンニ派を支援するといった事が起きます。逆もしかり。
ーーーーー日常生活面での違いーーーーー
イスラム教徒にとっては宗派の違いは大きな違いになるのでしょうが、普段ほとんど宗教を意識しない僕ら日本人にはとっては、これだけだと日常生活面でシーア派とスンニ派がどう違うのかよくわかりません。
具体的な行動の違いとしては多くは分かりませんでしたが、以下のものがあげられるようです。
・偶像崇拝・・・スンニ派は偶像崇拝がいけないという「コーラン」の教えを重視して、肖像画を掲げる事をしない人が多いのですが、シーア派はこの点にあまりこだわりません。シーア派が多いイラン国内では、指導者の肖像画が至る所に掲示されています。
・お祈りの回数・・・スンニ派は１日５回。シーア派は１日３回。
・六信五行と五信十行 ・・・一般的にムスリムの義務と知られている六信五行ですが、シーア派は六信五行ではなく五信十行となっているようです。
イランの多くの女性はチャードルを着て体全体を覆います
以上、シーア派について分かる範囲でまとめてみました。まだまだ知識が浅いので間違いあるかもしれません。それにしても分かり易くまとめるってめちゃくちゃ難しい・・・。
ポチッとお願いします！
※参考にした本はこちら。
「大人も子どももわかるイスラム世界の「大疑問」 (講談社プラスアルファ新書)
イスラム教の基本的概念に関して非常に分かり易く学べます。
」
タイトルの通りイスラム教について根本的に考えさせる書。イランのシーア派についての説明多し。全体的にちょっと難しめ。